ホチキス先生の「プログラマーと呼ばれたい」

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教科「情報」とプログラミング

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高等学校で教科「情報」が新設され、「情報A」「情報B」「情報C」が選択必履修科目として実施されたのは 2003年、平成 15年の 4月のことだ。今年度で 13年目を終えようとしている。必履修科目とは、日本で高等学校を卒業するためには必ず学ばなければならない科目のことであり、それは文部科学省が学習指導要領で決めている。学習指導要領はおよそ 10年単位で新しいものに書き換わっており、時代の変化に対応しながら必履修科目も変わってきている。選択必履修とは、学習しなければならない科目を一つに決めるのではなく、いくつかの科目の中からどれか一つを選んで学習することになっている科目設定をいう。選択必履修のわかりやすい例として芸術があり、芸術は必履修だが現行の学習指導要領では「音楽Ⅰ」「美術Ⅰ」「書道Ⅰ」「工芸Ⅰ」のうち生徒の興味関心、学校の学習環境などに応じてどれか一つを選択して学習することになっている。教科「情報」も、「情報A」「情報B」「情報C」のうちどれか一つを学習すればよいと設定され、2003年、平成 15年の 4月に高等学校に入学した全国すべての生徒から教科「情報」が選択必履修科目となった。

ところがこの教科「情報」では、当初プログラミングに重きをおかない授業が主流だった。それどころかコンピュータや情報通信ネットワークすら軽んじられた。それには理由がある。

2003年の 4月から新たな科目「情報」の授業を全国の高等学校で一斉に実施しなければならなくなったが、多くの学校で 1年生に週 2時間の授業を実施することになった。これは例えば 1学年 8学級規模の学校で週あたり 16時間の授業が必要になることであり、教員 1名を充てなければならない計算になる。現時点で文部科学省の最新データによると、全国の普通科を擁する高等学校数は 3,824校、普通科に在籍する高等学校生徒数は 2,415,330名であり、この数値に基づくと新たに学校に 1名配置するとすれば 3,800名、生徒数 320名に対して 1名配置するとすれば 2,500名の新たな教員採用が必要となる計算になる。その一方で生徒にとってみれば教科「情報」の授業が増えるかといって、週当たりの授業時間が 30時間から 32時間に増えるわけではない。「情報」の授業が増える一方で減る授業がある。民間企業ならば不要部門を整理して人員を減らし、新たな部門に人材確保するところだろうが公務員はそうはいかない。そこで「理科」や「数学」などの現職教員から教科「情報」の実施に意欲のある、または資質のある教員を選び、通称「認定講習」と呼ばれる一定の講習を受けた者について教科「情報」の免許を交付することにした。この免許講習は 2000年、平成 12年から 2002年、平成14年の3年間に各都道府県で実施され、全国で約9000人の教科「情報」教員免許取得者が誕生したと言われる。

筆者はもと理科の教員で、この「認定講習」の最初の年、平成 12年に参加して免許を取得した。この研修で強い印象を受けたのは、「先生方の得意な分野で授業をしてもらえばいい」という雰囲気だ。敷居が高ければ免許講習を受けようと思う教員が少なくなるためだと感じた。教科「情報」の出発点で、教員は最初から甘やかされたのだ。

総合的な学習の時間や複数の科目に横断的な授業の試み、問題解決型学習などの新しい授業が注目を浴びる中で、教員の中には地域の商店街の Web ページを作成する授業やプレゼンテーションの授業、情報モラルの授業、インターネットを使った国際交流などを展開して実践発表をして注目を浴びる者も出てきた。これらは授業の手法のひとつであって目的ではない。「コンピュータを使わなくても情報教育はできる」や「新聞やテレビなどを題材にして情報教育をする」といったことを言い出す人もいた。誤解を恐れずに言えば、これは勘違いだ。情報はコンピュータを使わなくてもやりとりでき、新聞やテレビも情報源のひとつだが、2003年に、なぜ、情報教育なのかといえば、コンピュータやインターネットが社会の主要な原動力になりつつあったからである。実際この 13年間で当時の予想を超えるスピードでコンピュータやインターネットが私たちの社会を変えてきた。

筆者は一貫してコンピュータとインターネットを中心にして授業を展開すべきだと主張し、実践してきた。もとは理科の教員であったということから、教科書に書かれていることを実験し体験的に理解する授業を重視した。たとえばテキストデータやビットマップ画像をバイナリエディタで開いて 2進数の値を調べることやネットワークのコマンドを体験すること、Web サーバーや電子メールサーバーを立てて管理すること、データベースを体験すること、簡単なプログラミングをすること、などだ。これらのことは、2009年9月の数研出版の機関紙「i-Net」第26号に書いたり、2009年10月に「高校での情報教育の現状と学会への期待 」の題で一般社団法人情報処理学会の雑誌に寄稿したりした。

「数研出版」情報通信 i-Net バックナンバー目次
http://www.chart.co.jp/subject/joho/joho_inet.html

数研出版「i-Net」第26号 2009年9月「教科「情報」6年間の総括と情報科教員に求められること」
http://www.chart.co.jp/subject/joho/inet/inet26/inet26-2.pdf

未来のコンピュータ好きを育てる: 10.高校での情報教育の現状と学会への期待
http://ci.nii.ac.jp/naid/110007386933

しかし振り返ってみれば、これら「ボタンの掛け違い」に始まったと思える教科「情報」の出発は、いきなり何千二人もの情報科教員を採用することや他教科の教員を整理することもできない行政的な事情があったわけで、政策的に避けがたいことであったともいえる。しかし教科「情報」も学習指導要領の改訂により「社会と情報」と「情報の科学」の 2科目に整理され、次期学習指導要領では「情報Ⅰ」のような単独櫃履修科目になると予想されている。そしてそこでは「プログラミング」を必ず取り入れることが期待されている。一方で身近には、もはや認定講習で教員免許を取得した先生方は元の教科に戻り「情報の授業はできません」といって断る例が多く、現場の情報科教員は慢性的に不足しているようである。そして大学で専門的に情報を学んだ教員が新採用で教壇に立ちつつある。甘やかされたピンチヒッターの時代は終わった。今こそ教科「情報」を正しく位置づけなおすことができる時だ。

今さら「私はワープロや表計算ソフトの使い方しか教えられません」と言う情報科の教員はいないだろうが、「**しかできません」というのは、たとえば「水泳しか教えられません」という体育の教員や「カレーしか作れません」という家庭科の教員、「夏目漱石だけで授業します」という国語科の教員、「韓国の歴史は教えられますが中国の歴史はわかりません」という地歴科の教員、「アリストテレスなら何時間でも授業できますが現代の政治はわかりません」という公民科の教員、「虚数の授業は得意ですが方程式は解けません」という数学科の教員、「核融合反応は説明できるけれど運動方程式はどうも」という理科の教員、「翻訳はできるが英会話は苦手で」という英語科教員に等しいのではないか。教科「情報」の教員なら、学習指導要領に示されている項目、教科書に書かれている内容は、生徒の興味関心や実態にあわせて奥深さに差はあっても、すべて授業で取り入れることができなくてはならないはずだ。もちろんプログラミングもだ。

次期学習指導要領は 2016年度、平成18年度中に答申され、新指導要領は、小学校が平成32年度、中学校は平成33年度、高等学校は 2022年度、平成34年度から全面実施される予定という。このまま何もせずずるずると 6年経ち「私はプログラミングは教えられません」と開き直る教員が続出することを防ぐためには(1)行政がきちんと計画的に教員の研修プログラムを策定すること(2)教育研究会などは既知の経験から授業実践や教材をまとめること(3)現場の教員は自ら研修と授業開発をすること、が必要だと考える。

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