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小学校の先生はオブジェクト指向を知らなくてよいか – 高度な領域を知ることで教え方も変わる

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プログラミング教育において「オブジェクト指向」を学ぶことは重要だが、もちろん小学生にオブジェクト指向を教えろと言っているのではない。もちろん将来的に小学校のプログラミング教育にオブジェクト指向が取り入れられることになれば、それは歓迎すべきことだが、今すぐそうはならないだろう。また近い将来にオブジェクト指向ではない別のアプローチがプログラミングの主流になるかもしれない。ただ、現代プログラミングにおいてはオブジェクト指向は強力な手法であり、およそ個人レベルで使われるアプリケーションのほとんどがオブジェクト指向によって作られているといえる。このことから高等学校レベルではオブジェクト指向を身につけることをプログラミング教育の目標のひとつにしたい。

発達段階に応じたプログラミング教育を考えたとき、小学校では手続き型のプログラミングに留めるべきだろう。またキーボードから文字入力をするコーディングではなく、ブロックを視覚的に組み合わせてプログラムを作る、いわゆる「ブロック型」の開発環境が望ましいだろう。そして構造化プログラミングとしてまとめられる「順次構造、繰り返し構造、条件分岐」を理解しプログラミングができること、センサやアクチュエータをマイコンボードやロボットで制御し、入出力を体験的に理解し活用できること、などが目標になるだろう。では小学校の先生はオブジェクト指向を知らなくてよいのかといえば、そうではない。小学校の先生もオブジェクト指向を理解するべきである。

オブジェクト指向は高度に抽象化されたプログラミング手法である。中学校、高等学校と発達段階がすすむにつれ、どこかの段階で身につけさせたい概念である。小学校の授業では教えなくても、これを知っているのと知らないのとでは教材の作り方や教え方が違ってくるだろう。

たとえば数学なら、中学校では連立方程式を学習する。よくある問題として「予算が290円あります。鉛筆は1本30円、消しゴムは1個50円です。予算を全部使って7人に渡すには、鉛筆と消しゴムをそれぞれ何個ずつ買えるでしょう。」がある。中学校の数学では、鉛筆を x 本、消しゴムを y 個として連立方程式を作って求めるだろう。小学生にとって連立方程式は抽象化度が高いので学ばないが、小学校6年生では「文字と式」の単元で数字を○や□にあてはめた計算方法を学習する。また「鉛筆を1本だけ買った場合、2本買った場合、3本買った場合・・・」と実際の数をあてはめながら答えを求めることもさせる。そしてこれは、中学校で連立方程式を学ぶ前段階として位置づけられている。もちろん教師は中学校では連立方程式を学習することを知っており、それを前提に授業を組み立てる。学問は系統だっており、学習も発達段階に応じて系統的に組み立てられるからだ。

したがって小学校の先生がプログラミング教育を行う時も、学習の先にオブジェクト指向があることを知っているのと知らないのとでは授業のアプローチも違うはずだ。その意味でも、小学校の先生もオブジェクト指向を理解しておくべきだ。オブジェクト指向は難しいと言われるが、すぐれた教材と学習メソッドがあれば理解できる。小学校からプログラミング教育を、と言われて奮闘する小学校の先生には頭が下がる思いであり、先駆的な実践を始めている先生方は子どもたちの未来を切り開く希望の星だと言えるが、そこを、あえて、さらに質の高いプログラミング教育を実現するために、オブジェクト指向を学んでいただきたいと望んでいる。

2018年3月8日

松本 吉生(まつもとよしお)
Microsoft MVP Data Platform

1961年京都に生まれ、神戸で幼少期を過ごす。大学で応用化学を学んだのち、理科教諭として高等学校に勤務する。教育の情報化が進む中で校内ネットワークの構築運用に従事し、兵庫県立明石高等学校で文部科学省の「光ファイバー網による学校ネットワーク活用方法研究開発事業」に携わる。兵庫県立西宮香風高等学校では多部制単位制の複雑な教育システムを管理する学籍管理データベースシステムをSQL ServerとInfoPath、AccessなどのOfficeソフトウエアによるOBA開発で構築・運用する。現在は兵庫県立神戸工業高等学校でC#プログラミング、IoTなどのコンピュータ教育を行う。2004年からマイクロソフトMVP(Microsoft Most Valuable Professional)を受賞し、現在14回目の連続受賞。2016年にマイクロソフト認定教育者(Microsoft Innovative Educator Experts : MIEE)を受賞し、現在3回目の連続受賞。

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オブジェクト指向は宗教ではない。プログラミングを合理的にする重要な手法のひとつである。 – オブジェクト指向は難しくない。ただ、よき学びの環境がないだけだ。

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オブジェクト指向が語られるとき、ときに「宗教論争になる」と言われることがあるが、そうではない。宗教論争においては他の宗教を認めず自分の宗教の正しさのみ主張し、相手の宗教を否定する。しかしオブジェクト指向は他のプログラミング手法を否定するものではなく、ただ単にプログラミングを合理的にする手法のひとつである。そしてそれは現代プログラミングにおいては重要であり、かつ広く実際に利用されている。そして一般的なパソコンユーザーが利用するアプリケーションのほとんどがオブジェクト指向によって作られている。

すべてのプログラミングをオブジェクト指向によって作る必要はない。またオブジェクト指向ではないプログラミング言語もあり、それらも当然意味がある。またオブジェクト指向プログラミングにおいても手続き型の考え方が不要なわけではない。ただ、プログラミングを合理的にするためにオブジェクト指向は極めて有効である。

オブジェクト指向を説明するときに、動物や物に例えられることがある。だが、たいていの場合それは、なんとなく説明になっているようでなっていない。それはオブジェクト指向というものが、そもそも現実世界をプログラミングに持ち込むために考えられたのではなく、プログラミングという抽象的な世界で効果的に機能するために考え出されたものだからだ。オブジェクト指向は抽象的なプログラミングの世界をさらに高度に抽象化したものといえる。

したがって現代プログラミングにおいてオブジェクト指向を知らないことは損である。知っていて使わないことと知らないから使えないことは意味が違う。オブジェクト指向を用いると圧倒的に合理的にできるプログラミングが、知らなければその恩恵にあずかることはできない。そもそも言語体系がオブジェクト指向を前提としているにもかかわらず、それができないことは圧倒的に不利であると同時に、言語の持っている潜在能力を生かせないことになる。

言語仕様がオブジェクト指向であるとき、プログラミングではオブジェクトを操作することになる。しかし、ただ単にオブジェクトを操作するだけでは、たとえ動くコードを書けたとしても、それはオブジェクト指向のプログラミングではない。求める機能を実装したオブジェクトを設計し、全体のコードの中で効果的に使うことができてはじめてオブジェクト指向プログラミングをしたといえる。

オブジェクト指向は難しいと言われる。確かに筆者もオブジェクト指向を理解し、自然に使えるようになるには時間がかかった。またプログラマーを自任している人でも、実際のところオブジェクト指向を理解し、使いこなしている人がどれだけいるか、いささか疑問に感じることも多い。というのも、世にあふれる初心者向けのプログラミング解説書を読んだとき、どうやらオブジェクト指向を理解していないのではないかとおもわれるふしが多々あるのだ。

だがオブジェクト指向は難しくない。ただよき学習の機会が少ないからだ。それは書籍でもWebの記事でもそうである。クラスやインスタンスを説明しても、なぜ、そうするのか、どこがオブジェクト指向なのかが説明されていない。オブジェクト指向でプログラミングした場合と、そうでない場合とを比較し、だからオブジェクト指向でやるのだ、というような明確な解説が少ない。オブジェクト指向を理解することは、例えば自転車に乗る、跳び箱を飛ぶ、鉄棒で逆上がりをするといったようなものだ。こつがわからなければ何度やってもうまくいかない。いくら練習しても一生できないのではないか、と子どもなら思うところだが、一度できれば忘れない。

子どもは、自転車に乗る、跳び箱を飛ぶ、鉄棒で逆上がりをする、といった体験をしながら達成感を得て成長する。すぐれた教育者は、どの子も自転車に乗れ、跳び箱を飛べ、鉄棒で逆上がりができるようなメソッドを身につけて指導する。オブジェクト指向も高度に抽象化されたプログラミング手法であるが、高校生レベルなら身につくはずである。教科「情報」の教員なら、まず自らオブジェクト指向を身につけ、すぐれた教育メソッドを開発すべきである。

2018年3月8日

松本 吉生(まつもとよしお)
Microsoft MVP Data Platform

1961年京都に生まれ、神戸で幼少期を過ごす。大学で応用化学を学んだのち、理科教諭として高等学校に勤務する。教育の情報化が進む中で校内ネットワークの構築運用に従事し、兵庫県立明石高等学校で文部科学省の「光ファイバー網による学校ネットワーク活用方法研究開発事業」に携わる。兵庫県立西宮香風高等学校では多部制単位制の複雑な教育システムを管理する学籍管理データベースシステムをSQL ServerとInfoPath、AccessなどのOfficeソフトウエアによるOBA開発で構築・運用する。現在は兵庫県立神戸工業高等学校でC#プログラミング、IoTなどのコンピュータ教育を行う。2004年からマイクロソフトMVP(Microsoft Most Valuable Professional)を受賞し、現在14回目の連続受賞。2016年にマイクロソフト認定教育者(Microsoft Innovative Educator Experts : MIEE)を受賞し、現在3回目の連続受賞。

プログラミングのできない学者や有識者がプログラミング教育をねじ曲げる – プログラミングの「プ」の字もなかった教科「情報」迷走の轍をふまないために – プログラミング教育の体系化が緊急課題

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念のため、本文はあくまでも現場の一教員による私見であることを断っておく。

2003年から教科「情報」が高等学校ではじまったとき「教科『情報』はコンピュータを教える教科ではない」と声高に叫ばれ、そこで台頭してきたのは「なになに情報教育学会」といった新興のステークホルダーである。それは、長年日本のコンピュータ教育をけん引してきた情報処理学会とは異にした流れの、教育学や認知科学分野の学者や有識者によるものだった。当時の雰囲気は「情報処理は情報教育学の単なる一分野にすぎない」といった論調が主流であった。おそらくボタンの掛け違いはここに始まった。このために情報教育はコンピュータやインターネットを正面からとりあげず、普遍的なメディア論やプレゼンテーションやディベート、調べ学習、問題解決学習、共同学習、さらには道徳のような「情報モラル」に偏り、プログラミングの「プ」の字もなく始まった。

2003年にはじまり15年間の迷走を続けた教科「情報」は、ようやく小学校のプログラミング教育をきっかけに本来の目標に立ち戻ろうとしている。だが問題は、教科「情報」がはじまったときと似た現象、つまりプログラミングのできない学者や有識者がプログラミング教育のステークホルダーに居座り続けようとしていることだ。そのため、たとえば文部科学省の調査研究協力者会議「小学校段階における論理的思考力や創造性、問題解決能力等の育成とプログラミング教育に関する有識者会議」では2016年6月16日に出した「小学校段階におけるプログラミング教育の在り方について(議論の取りまとめ)」にわざわざ「コーディング(プログラミング言語を用いた記述方法)を覚えることがプログラミング教育の目的であるとの誤解が広がりつつあるのではないかとの指摘もある」「時代を超えて普遍的に求められる力としての『プログラミング的思考』などを育むことであり、コーディングを覚えることが目的ではない。」などと書かれている。

めまいがするほどだ。コーディングを覚えずに時代を超えて普遍的に求められる「プログラミング的思考」など身につくなどと本気で思っているのだろうか。

この現状は、おそらく、いわば「外国に行ったことのない学者や有識者が国際理解教育を作ろうとしている」くらいの状況である。

その一方で、主として小学校の現場では、先駆的な教員によって自主的にプログラミング教育の実践が始まっている。子どもたちに扱いやすい教材、わかりやすいカリキュラム、実習をしやすい環境構築を模索している。インターネットを通じた実践交流も活発に行われている。もはや緊急の課題は、初等中等教育を通じたプログラミング教育の体系化である。「プログラミング教育はプログラミングを教えるものではない」などと禅問答をしている場合ではないのだ。

小学校では流れ図に示される構造化、つまり順次構造、反復構造、条件分岐でいいとして、ブロック型プログラミングから始めることがいいだろう。簡単なマイコンボードを使った計測や制御も取り入れるべきだ。ではその次はどうか。中学校では何をするのか、高等学校では何をするのか。

まず何よりもオブジェクト指向を取り上げるべきだ。オブジェクト指向がわからなければ現代プログラミングを理解したことにならない。かく言う私もオブジェクト指向を理解するには時間がかかった。「オブ脳」という言葉があるように、オブジェクト指向は言葉で説明されて理解できるものではなく、例えれば自転車に乗れるようになるようなものだ。子どもが自転車に乗れるようになる瞬間、それは突然やってくる。なんどもなんども失敗を繰り返し、ほんの数センチでさえ動いて倒れる様子を見ていると、はたして本当に乗れる日が来るのだろうかと心配になるが、乗れるようになるのは突然である。そして一度乗れるようになれば、あたりまえのようにすいすいとこげるようになる。

オブジェクト指向を理解するにはオブジェクト指向プログラミングをしなければならない。自分でコードを書き、動かしてはじめてオブジェクト指向は理解できる。「オブジェクト指向はカプセル化、継承、ポリモーフィズム」と暗記するだけでは何の意味もない。なぜプログラミングはオブジェクト指向になったのか、オブジェクト指向の何がいいのか、どこでどうオブジェクト指向を利用すればいいのか、を理解しなければ意味がない。それには言語として C# (C Sharp) がいいと断言できる。かつて BASIC が初心者にとって学びやすい言語であったのと同じくらい C# はオブジェクト指向を学ぶ初心者にとって学びやすい。言語仕様が正確であり、JIS や ISO にも規定されている。ポインタやガーベージコレクションを意識する必要もない。書法は簡潔で美しい。Visual Studio という優れた開発環境もある。

すぐれた自転車教室にはノウハウがあり、一日やれば必ず乗れるようになるプログラムがある。それと同じように、オブジェクト指向も優れたカリキュラムがあれば誰でも理解できるようになる。中学校段階なら必ず理解できる。オブジェクト指向とともに理解しなければならないことは、イベントドリブンである。サーバーサイドプログラミングも中学校では身につけさせたい。Webサービスのインタフェースなどは中学生段階でも理解できるだろう。

コンピュータの抽象化、クラウドコンピューティングは高等学校の内容になるだろう。機械学習や AI、データ処理を通じてイベントドリブンからデータドリブンのプログラミングを学ぶ必要がある。マイコンボードをネットワークにつなぎセンサのデータを集めるIoTからデータベースを学ぶ必要もあるだろう。近い将来クラウドコンピューティングは革命的に転換しそうなので、関数型プログラミングやサーバーレスといった技術がテーマになるだろう。

数年後には小学校でプログラミングの基礎を身につけた子どもたちが中学校へ、そして高等学校へ進学してくる。必要なことはプログラミングのできる学者や有識者が情報教育をけん引し、プログラミング教育を体系化することだ。現場の教員も口を開けて待つのではなく、自己研鑽と教材研究にいますぐ取り組むべきである。

2018年1月12日

松本 吉生(まつもとよしお)
Microsoft MVP Data Platform

1961年京都に生まれ、神戸で幼少期を過ごす。大学で応用化学を学んだのち、理科教諭として高等学校に勤務する。教育の情報化が進む中で校内ネットワークの構築運用に従事し、兵庫県立明石高等学校で文部科学省の「光ファイバー網による学校ネットワーク活用方法研究開発事業」に携わる。兵庫県立西宮香風高等学校では多部制単位制の複雑な教育システムを管理する学籍管理データベースシステムをSQL ServerとInfoPath、AccessなどのOfficeソフトウエアによるOBA開発で構築・運用する。現在は兵庫県立神戸工業高等学校でC#プログラミング、IoTなどのコンピュータ教育を行う。2004年からマイクロソフトMVP(Microsoft Most Valuable Professional)を受賞し、現在14回目の連続受賞。2016年にマイクロソフト認定教育者(Microsoft Innovative Educator Experts : MIEE)を受賞し、現在3回目の連続受賞。

プログラミング教育の目標はプログラミングを学びながらプログラミング思考を身につけることである。 – 教科「情報」迷走の轍をふまないために

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西暦2000年の政府の「ミレニアムプロジェクト」の「教育の情報化」を受けて新しい学習指導要領で高等学校に教科「情報」が導入されようとしたとき、しきりに「教科『情報』はコンピュータを教えるものではない」という声があった。情報はコンピュータやインターネットを通じてだけで流通するものではないから、テレビやラジオ、新聞などのメディアを総体として取り上げるべきだ、というのである。また「情報」はコミュニケーションであり表現活動であるから、プレゼンテーションやディベートなどを取り上げるべきだ、とか情報モラルこそ重要だと声高に騒がれ「相手の気持ちになってメールを書きましょう」といった道徳のような授業が行われるといった迷走が長く続いた。

当時から俺の考えはこうだ。もしテレビやラジオ、新聞のようなメディア一般を学ぶ必要があるなら、それは1960年代に行うべきだった。21世紀に情報教育を行うなら、それは紛うことなく「コンピュータとインターネット」を正面から取り上げるべきである。しかしようやく、教科「情報」が実施された2003年からから15年を経て「プログラミング教育」が日の目を浴びることになった。感無量である。

だが、ここにきてまた本質から目を背けようとする意見を目にするようになる。「プログラミング教育はプログラミングを学ぶものではない」といった論調だ。いったいこれは何だろう。プログラミングを学ばずに何をどうしようと言うのだろう。他の教科でこの意見をまねてみればおかしなことがすぐわかる。「数学教育は数学を学ぶものではない」「英語教育は英語を学ぶものではない」「国語教育は国語を学ぶものではない」と。これらの意見は空論である。

もう少しひねった言い方では、こんなものもある。「プログラミング教育はプログラミングを学ぶのではなくプログラミング的思考を養うものである。」と。だがこれも意味がない。プログラミングをせずにプログラミング的思考が身につくはずがない。計算せずに数学的思考を養うことはできないし、文章を読んだり書いたりせずに国語的思考を養うことはできない。

なぜこのようにプログラミングを斜めからしか見ない意見が出てくるかといえば、それは教科「情報」が始まったときにコンピュータやインターネットから目を背けようとした流れと同じである。つまりプログラミング教育を含めた広い意味での日本の情報教育について主導権をとろうとしている学者や有識者の多くがプログラミングを知らないからだ。また現場の教員もプログラミングの知識や技術がなく、教育行政も教員のプログラミング力の底上げ責任を放棄して教員の自主性にまかせているだけだからだ。

そもそも、なぜプログラミング教育が必要なのか。それは現代の高度情報通信社会においてプログラミングは価値を生むものだからだ。プログラミングによって新しい価値を生み、私たちの社会は豊かになる。狭い意味では国際競争力をつけて日本が発展し続けるためであり、普遍的には世界の人々がより豊かになるための知識や技術であるからだ。だからプログラミング教育が必要なのだ。したがって、もし仮にこのようなことがあり得るとして、プログラミング的思考が身に着いたが実際のプログラミングができない、といった教育をしても意味がない。

誰もがプログラマーになるわけではない、という意見もあるが、しかし誰もが数学者になるわけではなく翻訳者になるわけではないが、数学や英語は必修科目である。考えてみよう。30年前にパソコンがこれだけ社会に広く普及することを想像できただろうか。30年前、俺が中学生だったころはパソコンは物好きのおもちゃだった。25年前、俺が就職したころは学校にパソコンが導入されはじめたころで、表計算ソフトを使うことが特殊技能だった。20年前、パソコン通信をやるのは一部のマニアであり、パソコンをインターネットにつなぐのは素人にはできなかった。15年前にはWi-Fiやルーターの設置などは一般の人には見当もつかない作業だっただろう。10年前には表計算ソフトで簡単なマクロを作って自動処理することくらいは普通の事務処理になった。今はどうだ。パソコンは使えません、表計算ソフトはわかりません、コンピュータをインターネットにどうやってつなぐのですか、などでは仕事にならないだろう。

現代プログラミングを知らない人間がアルゴリズムを語ると、たいて流れ図を使った構造化プログラミングの説明で終わってしまう。つまり、順次構造、反復構造、条件分岐、である。もちろんこれはプログラミング的思考の基礎ではあるが、たとえて言えば数学で加減乗除を教える程度のことである。現代プログラミングにおいては「オブジェクト指向」や「イベントドリブン」を理解しなければ話にならない。今後はクラウドコンピューティングの革命により「サーバーレス」と「関数型言語」、そして「データドリブン」の考え方が必要になる。

小学校の教員を中心に、草の根的にプログラミング教育の実践が積み上げられていること、それも急速にすすんでいることが救いである。これら実践を重ねている先生方は日本のプログラミング教育の希望の星といえる。子どもたちが目を輝かし、楽しみながらプログラミング経験を積み重ねている。高等学校の教員は、この子供たちが数年後に高等学校へ進学したときに、どのようなプログラミング教育をしなければならないのか、今から考え実践を始めなければならない。「プログラミングを教えるのではない」などという甘言に弄されずに。

2018年1月11日

松本 吉生(まつもとよしお)
Microsoft MVP Data Platform

1961年京都に生まれ、神戸で幼少期を過ごす。大学で応用化学を学んだのち、理科教諭として高等学校に勤務する。教育の情報化が進む中で校内ネットワークの構築運用に従事し、兵庫県立明石高等学校で文部科学省の「光ファイバー網による学校ネットワーク活用方法研究開発事業」に携わる。兵庫県立西宮香風高等学校では多部制単位制の複雑な教育システムを管理する学籍管理データベースシステムをSQL ServerとInfoPath、AccessなどのOfficeソフトウエアによるOBA開発で構築・運用する。現在は兵庫県立神戸工業高等学校でC#プログラミング、IoTなどのコンピュータ教育を行う。2004年からマイクロソフトMVP(Microsoft Most Valuable Professional)を受賞し、現在14回目の連続受賞。2016年にマイクロソフト認定教育者(Microsoft Innovative Educator Experts : MIEE)を受賞し、現在3回目の連続受賞。

Minecraft Education 版の新機能(3) – ミュートボタン

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教育版マインクラフトの機能拡張がすすんでいる。新しいバージョンではミュートボタンが搭載された。このミュート機能は、コマンドを使ったときのレスポンス表示をミュートする機能だ。サウンドのミュートではない。マインクラフトではコマンド入力によって世界を操作すると、画面に実行した操作のレスポンスが表示される。たとえば /weather thunder コマンドで天候を雷雨に変更すると、画面にレスポンスが表示される。

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コマンド入力モードでは実行したコマンドの結果が履歴で表示されている。

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コマンド入力モードで右上にある「ミュート」スライダを右にして「オン」にすると、コマンド実行の結果を画面に表示しなくなる。雷雨になったマインクラフトの世界を /weather clear コマンドで晴れにしてみよう。

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コマンドを実行して天気が晴れになろうとしている。しかし実行結果は画面に表示されていない。

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コマンド入力を多用したとき、画面が実行レスポンスの履歴で邪魔になることがある。「ミュート」機能をオンにすると、レスポンスが表示されないので操作の邪魔にならずにすむだろう。

Minecraft Education 版の新機能(2) – コマンド入力ボタン

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マインクラフトにはコマンド入力モードがあり、教育版でなくてもコマンドを使ってマインクラフトの世界をコントロールすることができる。プログラミングの基本はコマンド入力だといってもいいが、小学生にとってはキーボードからのコマンド入力は敷居が高い。そこで基本的ないくつかのコマンドをマウスでクリックして実行できるボタンが搭載された。

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画面の下にあるコマンド入力テキストボックスの左にスラッシュ「/」のボタンがある。このボタンをクリックすると「世界のスポー地点を設定する」、「テレポート」、「時間」、「天候」のメニューが表示され、これら基本的なコマンドをマウスクリックだけで実行できる。

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たとえば「天候」のボタンをクリックすると、コマンドラインに「/weather」のコマンドが自動的に書かれ、次のメニュー「晴れ」、「雨」、「雷雨」を選ぶことができる。

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限られたコマンドだが、このボタンを使うことによってコマンドの使い方や記述方法を学ぶことができる。子供たちにはボタンがあることさえ伝えておけば、あとは自分でやってみて身に着けることができるだろう。まさに、体験的学習を明確に意識した実装だ。

Minecraft Education 版の新機能(1) – 座標を画面に表示する

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マインクラフトは小学生を中心に大人気のゲームアプリだが、共同学習とプログラミング学習の機能を加えた学校教育向けのエデュケーション版「Minecraft Education」がある。このエデュケーション版は実際に授業で活用した教員のフィードバックにより改良がすすんでおり、ますます使いやすくなっている。その一つが画面に座標を表示する機能だ。

ゲームとして遊ぶには座標を特別意識する必要はない。しかしプログラミングをしてエージェントを動かし、ブロックを配置するなどの場合には座標の概念が欠かせない。マインクラフトの世界で自分がどこにいて、どこに何をしたいのかを座標で与えなければならないからだ。

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Minecraft Education を起動したら「遊ぶ」のボタンをクリックして「世界」のタブで新しい世界を作ろう。新しい世界を作りときに「ゲーム設定」をするが、ここにある「チート」と「常に昼間」などのスライドボタンに加えて、新しいボタン「座標を表示」と「教室の設定を表示」のボタンがある。

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このスライドスイッチは「チートの実行」と「常に昼間」を右にスライドしてオンにしておくことがプログラミングなどの実習時には望ましい。さらにここで新しくできた「座標を表示」のスライドを右にしてオンにしてみよう。

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「座標を表示」にしたプレイ画面がこれだ。画面の左上に自分の座標が表示されていることがわかるだろう。これで自分の位置を確かめながらマインクラフトの世界を歩くことができる。プログラミング時に座標を使う場合もこれでわかりやすい。座標がわからなければ、コードによってブロックを配置しても、いったいどこに出現したか探し回らなければならないこともあったが、これでわかりやすくなった。