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Microsoft SQL Server 2019 Technical White Paper を読む

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Microsoft SQL Server の歴史は長い。もともと開発の出発は、Sybase社のデータベースが元になったと言われているが、マイクロソフト製品としての最初のバージョン 1.0 は OS/2 向けの製品でリリースは 1989年だった。その後マイナーチェンジを行いながら、大きくバージョンアップしたのはWindows NT 向けの製品であるバージョン 4.21 でリリースは 1993年だ。次の大きなバージョンアップは 6.0 でリリースは 1995年。

Microsoft SQL Server のターニングポイントは 2000年にリリースされたバージョン 8.0、SQL Server 2000 だろう。日本語の書籍も多く出版されるようになり、とりわけ SQL Server ユーザーのすそ野を広げたのは松本美穂さんの書かれた「SQL Server 2000 でいってみよう」だろう。この本は技術書でありながら初心者向けに丁寧に書かれた優れた啓蒙書でもあった。

Microsoft SQL Server の歴史が 1989年に始まったとすれば、来年 2019年には満30歳になる。人間ならば実務の中堅として活躍する年齢だが、ソフトウエアの歴史としてはたいへん長いものだ。

Microsoft 社の SQL Server のページを見ると様々な技術情報が手に入るが、まず最初にテクニカルホワイトペーパーを読むべきだろう。

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テクニカルホワイトペーパーは PDF 文書として提供されている。だが現時点では日本語訳はなく、オリジナルの英語のドキュメントしかない。技術革新が早く新製品が次々と提供される、あるいはソフトウエアがサービスになり不断に改良される今日において、技術者の英語読解力は必須のものだろう。そのうえでも「速読」力が必要とされる。細かい文暦にこだわらず、全体像を早く読み解く力だ。

Microsoft_SQL_Server_2019_Technical_White_Paper_mid_640

他の非英語圏の人々に比べて、といってもどの国と比べるかによるのだろうが、日本人は英語が苦手だといわれる。その理由はいろいろあるだろう。必ずしも負の側面だけでなく、日本語は日本語としてまとまりのある文化圏を形成しており、英語に頼ることなく文化、技術、芸術など完結したものがある。平たく言えば英語を知らなくても十分に文化的な生活ができるのだ。世界の国別人口をみると、日本人はおよそ 1億2千600万人で、これは国別人口では世界第10位だ。この人口は少ない数字ではない。ましてや中国やアメリカなどは多民族国家であることを考えると、単一民族でこれだけの人口を有するのが日本である。

ちなみに日本を「単一民族国家」だと言えば「それは違う」と重箱の隅をつつくような議論がおこることがあるが、まぎれもなく日本は共通の言語、共通の価値観、共通の社会構造を持つ事実上の単一民族国家であることは間違いない。

よく「日本は世界では小さい島国だ」と自ら見下すような表現もあるが、決してそうではないのだ。

日本人の英語力が低いもうひとつの理由は、間違いなく公教育における英語教育の貧弱さにある。新しい高等学校の学習指導要領が公示され、英語教育は「読む」「聞く」「話す(やり取り)」「話す(発表)」「書く」の4技能5領域を総合的に充実させることを目標に掲げている。これは当然のことであって、このことを改めて強調するということは、今までできていなかったことの証拠である。思えば筆者が学生時代は基本的に「読む」「書く」ことが英語学習の中心であり、「ヒアリング」という言葉で「聞く」教育が取り入れだしたところだった。学校には LL教室という部屋が整備され、主にテープレコーダーを使ったヒアリング授業が始まりつつあった。しかし高校では当時の大学入試に特化した英語教育しかなかったので、LL教室はあってもほとんど使った記憶がない。

話は脱線した。英語力が低いことを教育のせいにしても仕方がない。英語は慣れるしかない。英語力があれば、インターネットからタイムリーに最新の技術情報を手に入れることができる時代なのだから。

2018年12月17日

松本 吉生(まつもとよしお)

Microsoft MVP Data Platform
1961年京都に生まれ、神戸で幼少期を過ごす。大学で応用化学を学んだのち、理科教諭として高等学校に勤務する。教育の情報化が進む中で校内ネットワークの構築運用に従事し、兵庫県立明石高等学校で文部科学省の「光ファイバー網による学校ネットワーク活用方法研究開発事業」に携わる。兵庫県立西宮香風高等学校では多部制単位制の複雑な教育システムを管理する学籍管理データベースシステムをSQL ServerとInfoPath、AccessなどのOfficeソフトウエアによるOBA開発で構築・運用する。2015年から2017年まで兵庫県立神戸工業高等学校でC#プログラミング、IoTなどのコンピュータ教育を行い、現在は兵庫県立神戸甲北高等学校に勤務する。2004年からマイクロソフトMVP(Microsoft Most Valuable Professional)を受賞し、現在15回目の連続受賞。2016年にマイクロソフト認定教育者(Microsoft Innovative Educator Experts : MIEE)を受賞し、現在4回目の連続受賞。

マイクロソフトの川西裕幸さんのこと、そしてエバンジェリストという職業

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マイクロソフト社でエバンジェリストであった川西裕幸さんが亡くなった。

私は個人的に川西裕幸さんと親しかったわけではない。しかし私は2004年からMicrosoft MVPをいただいており、Microsoft MVPとエバンジェリストの関係はとても深い。一般の方々にとってマイクロソフトのエバンジェリストは、イベントなどで華々しく技術の詳細を語る、いわばスターのようなものだ。しかしMVPにとってエバンジェリストは個人的に顔をあわせる機会もあり、またMVPだけの小規模なミーティングなどでお会いでき、一般の人にとってより身近な存在である。いわば同じ道場で修行する先輩、あるいは師匠のようなものに感じていると言っていいだろう。私にとっても川西裕幸さんがお亡くなりになったことは大きな驚きであり悲しみである。

そしてこのたびの訃報に際して、川西裕幸さんを知る多くの人が驚きと悲しみでそれを受け止め、いかに素晴らしい人であったかということを語っている。彼とともに働いた人が、彼の功績を称えている。彼の人柄を称えている。エバンジェリストとして素晴らしい人であったと、惜しみない賛辞を与えている。

マイクロソフトのエバンジェリストは、一言でいえば技術を平易に解説する人である。evangelistの語源は聖書の福音書の著者のことであるらしく、その意味から「福音伝道者」といった訳をすることもある。技術は宗教ではないのだが、新しい技術はそれが人々に知られなければ使われないし、抽象的な概念はある程度かみくだいて説明されればよくわかる、ということから、技術を解説することを主たる職業としている人を「エバンジェリスト」と呼んでいる。

マイクロソフトのエバンジェリスト達はもちろんマイクロソフト社で働いているのだから、マイクロソフト社の製品について技術を解説することが仕事である。当然、マイクロソフト社の製品が売れるように技術を解説し宣伝する。しかしこれが他の分野における宣伝活動と根本的に異なるのは、エバンジェリストは技術の客観的な優位性に基づいて語るところだ。エバンジェリストはまず徹底的にマイクロソフト製品を使い倒すことからはじめる。自社製品の隅から隅までを知り尽くして技術を解説する。これを「それは当然のことだろう」と言うのは簡単だが、現実は難しい。

マイクロソフト社には山のようなソフトウエア製品がある。製品として販売されているものだけでなく、追加機能やユーティリティとして無償で提供されているものもある。そしてエバンジェリストは特定の製品ごとに専門があるわけではない。もちろんある一定範囲の技術分野というものはあるのだが、主たる目的はユーザーが実現したいことを技術的に解説することになるので、そのためには関連する製品について周知していなければならない。そして今日ではあらゆるソフトウエアがネットワークで情報をやりとりしている。多くのサービスが連携し互いに影響を与え合っている。バージョンアップのサイクルは短い。ある製品が発売された時には、もはや次のバージョンの開発が始まっている。

私の知る限りにおいて、マイクロソフトのエバンジェリストの方々は、技術においてまったく公平で客観的である。決してマイクロソフト製品を誇大に宣伝することはない。場合によってはオープンソースのプログラムの使用を勧めることすら、ある。エバンジェリストはマイクロソフト製品を使いこなすだけではなく、他社製品やオープンソースのソフトウエアを評価することにも多くの時間を費やしているに違いない。おそらく気の遠くなるような作業である。

エバンジェリストの仕事として最も重要だと思われることは、最新の技術を伝えることである。コンピュータやネットワークの世界では、最新の技術をいち早く取り入れることが最も価値があることだからだ。世の中には技術の変化になかなか追い付けない人がいて、そんな人には「ドッグイヤー」どころか「マウスイヤー」とも言われる技術革新が居心地悪いと思えるかもしれない。しかし間違いなく技術革新が私たちの生活を豊かにしているのだ。技術革新によって必ず何かが今まで以上に簡単に実現できるようになる。これは逆説的にいえば、今まで以上に簡単にできるからこそ、その技術が世に現れ使われようとしているのだ。

実現するのに10時間かかっていたことが、新しい技術を使うと5時間でできるようになった。すると余った5時間を人は何か他のことに使うことができる。10人でやらなければならなかったことが5人でできるようになれば、5人は何か他のことをすることができる。人は技術革新によって豊かになってきた。技術がなければ誰もが朝から晩まで生きるための活動に追われていた太古の昔から、現代は多くの人が生きることに直接時間と労力をつかわなくても生きていける時代になった。これからもそうである。新しい技術が次々に開発されることによって、それを使う私たちはますます豊かになっていく。

つまりエバンジェリストは高度情報通信社会に生きる私たちの生活をさらに豊かにすることに携わる人である。直接に技術を使う私たちは、エバンジェリストの導きによって、より効率的に高度情報通信社会を支えていける。エバンジェリストはそのことに誇りを持ち、その先達であった川西裕幸さんに心から哀悼の意を捧げる。私たち技術にかかわる者も、川西裕幸さんの志を引き継ぎ、真摯に仕事に向かう。私たちが生きるこの世界を豊かにするために。

Written by Yoshio Matsumoto

2012年1月27日 at 11:12 PM