ホチキス先生の「プログラマーと呼ばれたい」

InfoPath & SQL Server !

Posts Tagged ‘発展的

プログラミング教育の体系化(2) – 「小学校段階におけるプログラミング教育の在り方について(議論の取りまとめ)」には中学校や高等学校でのプログラミング教育についても言及されている – 目標は「全ての高校生がプログラミングを問題解決に活用することを学べるようにする」こと

with one comment

平成28年4月19日に文部科学省の初等中等教育局教育課程課教育課程企画室によって開催された「小学校段階における論理的思考力や創造性、問題解決能力等の育成とプログラミング教育に関する有識者会議」は、平成28年6月16日に「小学校段階におけるプログラミング教育の在り方について(議論の取りまとめ)」を発表した。これを受ける形で、文部科学省は平成29年3月に新しい小学校学習指導要領(平成29年告示)を発表した。

この「議論のとりまとめ」にはプログラミング教育について、「子供たちに、コンピュータに意図した処理を行うよう指示することができるということを体験させながら」や「プログラミングを体験しながら」という記述が随所にあり、実際にプログラミングをすること、つまり「コーディング」することの重要性が示されている。その一方で、コーディングを「覚える」ことが「目的ではない」という誤解をまねく表現もあることについて、前掲の記事で示したところだ。

プログラミング教育の体系化(1) – 「小学校段階におけるプログラミング教育の在り方について(議論の取りまとめ)」を読み解く – プログラミング教育に対する誤解を払拭するために
https://matsumotoyoshio.wordpress.com/2019/08/01/%e3%83%97%e3%83%ad%e3%82%b0%e3%83%a9%e3%83%9f%e3%83%b3%e3%82%b0%e6%95%99%e8%82%b2%e3%81%ae%e4%bd%93%e7%b3%bb%e5%8c%96%ef%bc%88%ef%bc%91%ef%bc%89-%e3%80%8c%e5%b0%8f%e5%ad%a6%e6%a0%a1%e6%ae%b5/

この有識者会議の「議論のとりまとめ」は「小学校段階における」プログラミング教育の在り方についてという題であるが、小学校だけでなく中学校や高等学校のプログラミング教育にも言及されており、体系的なプログラミング教育の必要性を示唆している。

1.プログラミング教育を小、中、高等学校の教育課程全体で位置付ける

「議論のとりまとめ」の冒頭「有識者会議における議論の視野」には次のように書かれている。全文を引用する。

「小学校段階におけるプログラミング教育について議論をまとめるに当たっては、人工知能の進化等にみられる、近年の急速な情報化の進展が教育に与える影響や、そうした中で教育課程全体としてどのような力を育成していくことが求められるのかといった、情報化の進展と教育課程全体との関係について整理しておく必要があった。こうした点については、中央教育審議会における次期学習指導要領改訂に向けた議論も踏まえながら、下記1.や2.において整理している。」(小学校段階におけるプログラミング教育の在り方について(議論の取りまとめ) – 有識者会議における議論の視野)より引用

すなわちプログラミング教育は「近年の急速な情報化の進展」が背景にあり「情報化の進展と教育課程全体との関係」を見直す必要があったことから始まっている。ここで重要なのは「教育課程全体として」という言葉である。この「教育課程全体」という言葉は「2.これからの時代に求められる資質・能力とは」の冒頭に「特に、情報化の進展という社会的な変化の中では、以下のような資質・能力が重要になると考えられることから、こうした力の育成が教育課程全体を通じて実現されることが強く求められる。」とあり、言語能力との関連において「発達の段階に即して系統的に育成されるよう、小・中・高等学校を見通して教育内容の充実を図ることが検討されている。」とある。

すなわち、ここでの「教育課程」という言葉は単に小学校段階の教育を指しているのではなく、小学校、中学校、高等学校と義務教育諸学校を通じた教育課程のことを意味している。

2.中学校と高等学校でのプログラミング教育について

「3.学校教育におけるプログラミング教育の在り方とは」の「(2)学校教育として実施するプログラミング教育は何を目指すのか」には小・中・高等学校を通じたプログラミング教育について書かれている。ここでも「学校教育として」の言葉は小学校だけを指しているのではないことがわかる。以下引用する。

「【知識・技能】(小)身近な生活でコンピュータが活用されていることや、問題の解決には必要な手順があることに気付くこと。(中)社会におけるコンピュータの役割や影響を理解するとともに、簡単なプログラムを作成できるようにすること。(高)コンピュータの働きを科学的に理解するとともに、実際の問題解決にコンピュータを活用できるようにすること。」(小学校段階におけるプログラミング教育の在り方について(議論の取りまとめ) – 3.学校教育におけるプログラミング教育の在り方とは)より引用

つまり小学校で育成する「知識・技能」は、中学校と高等学校で発展的にコンピュータに関する教育を学ぶ系統的な学習プロセスの過程にあるということだ。また「知識」だけでなく「技能」として育成すること、すなわちプログラミングによる問題解決を実践的に身に付けることが求められている。そして「思考力・判断力・表現力等」には次のように発達の段階に応じたプログラミングを学ぶことを指摘している。

「【思考力・判断力・表現力等】発達の段階に即して、「プログラミング的思考」(自分が意図する一連の活動を実現するために、どのような動きの組合せが必要であり、一つ一つの動きに対応した記号を、どのように組み合わせたらいいのか、記号の組合せをどのように改善していけば、より意図した活動に近づくのか、といったことを論理的に考えていく力)を育成すること。」(小学校段階におけるプログラミング教育の在り方について(議論の取りまとめ) – 3.学校教育におけるプログラミング教育の在り方とは)より引用

ここも回りくどい表現であり隔靴掻痒たる感が否めないが「意図する一連の活動を実現」するために「記号の組み合わせをどのように改善」すればいいかを「論理的に考える」ことは、まさに「プログラミング」そのものであり、たとえどのような言語を使おうが、それがテキストであれブロック型であれ、実際にコーディングして試さなければ「より意図した活動に近づく」かどうかを理解できないだろう。つまり発達の段階に即した「プログラミング」を学ばなければならない。

3.中学校と高等学校の学習指導要領について

「議論のとりまとめ」の「(3)発達の段階に即した資質・能力の育成」には、次のように中学校や高等学校の学習指導要領についても言及されている。以下引用する。

「中学校及び高等学校では、それぞれの学校段階における子供たちの抽象的思考の発達に応じて、構造化された内容を体系的に教科学習として学んでいくこととなる。中学校では技術・家庭科において、高等学校では情報科において学ぶこととなるが、現在、中央教育審議会においては、中学校及び高等学校におけるプログラミング教育の充実についても議論されている。」「具体的には、中学校技術・家庭科技術分野の『情報に関する技術』において、計測・制御に関するプログラミングだけではなく、コンテンツに関するプログラミングを指導内容に盛り込むことによって、プログラミングに関する内容を倍増させること、高等学校情報科に共通必履修科目を新設し、全ての高校生がプログラミングを問題解決に活用することを学べるようにすることが検討されている。」(小学校段階におけるプログラミング教育の在り方について(議論の取りまとめ) – 3.学校教育におけるプログラミング教育の在り方とは)より引用

小学校でのプログラミング教育は特定の教科にまとめられないが、中学校では「技術・家庭科」で、高等学校では「情報科」で「構造化された内容を体系的に」学ぶことをふまえ、中央教育審議会でプログラミング教育を検討していることに言及している。そして中学校では従来からあった「計測・制御」だけでなく「コンテンツに関するプログラミング」が指導内容に盛り込まれると書かれており「倍増」という表現まである。高等学校では「全ての高校生がプログラミングを問題解決に活用することを学ぶ」と検討されている。

すなわち、この有識者会議は「小学校段階における論理的思考力や創造性、問題解決能力等の育成とプログラミング教育に関する有識者会議」であるが、「議論のとりまとめ」に書かれていることは中学校、高等学校と義務教育諸学校の体系的なプログラミング教育を視野に入れた中で、小学校でのプログラミング教育について示されていると理解するべきである。

2019年8月6日

松本 吉生(まつもとよしお)

Microsoft MVP Data Platform
京都に生まれ、神戸で幼少期を過ごす。大学で応用化学を学んだのち、理科教諭として高等学校に勤務する。教育の情報化が進む中で校内ネットワークの構築運用に従事し、兵庫県立明石高等学校で文部科学省の「光ファイバー網による学校ネットワーク活用方法研究開発事業」に携わる。兵庫県立西宮香風高等学校では多部制単位制の複雑な教育システムを管理する学籍管理データベースシステムをSQL ServerとInfoPath、AccessなどのOfficeソフトウエアによるOBA開発で構築・運用する。2015年から2017年まで兵庫県立神戸工業高等学校でC#プログラミング、IoTなどのコンピュータ教育を行い、現在は兵庫県立神戸甲北高等学校に勤務する。2004年からマイクロソフトMVP(Microsoft Most Valuable Professional)を受賞し、現在16回目の連続受賞。2016年にマイクロソフト認定教育者(Microsoft Innovative Educator Experts : MIEE)を受賞し、現在4回目の連続受賞。